『ちはやふる』の実写化にあたり、綿谷新役のキャスティングは難航を極めました。新はかるたの天才でありながら、内面に静かな情熱と孤独を抱える複雑なキャラクターです。新田真剣佑は、事務所の推薦枠ではなく、一般の激戦オーディションに参加してこの役を勝ち取りました。小泉徳宏監督は当時の選考について、「部屋に入ってきた瞬間に放つ圧倒的な華と、かるたの札を見つめる鋭い眼光が新そのものだった」と振り返っています。
しかし、アメリカ・ロサンゼルス育ちの彼にとって、最大の障壁となったのが「福井弁」と「競技かるたの所作」でした。新田真剣佑は撮影前の準備期間中、自ら福井県へ赴き、現地の空気を肌で感じながら方言指導の音声を四六時中聞き込む徹底した役作りを敢行しました。撮影現場の関係者によると、休憩中も一切標準語を使わず、共演者とも福井弁で会話を交わすほど役に没入していたと伝えられています。
その凄まじい執念は実を結び、公開後に映画評論家や原作ファンから「静寂の中に宿る鋭い殺気と、純朴な福井弁のギャップが見事」「原作からそのまま抜け出してきたような佇まい」と絶賛を浴びました。この圧倒的な演技力が評価され、2017年の第40回日本アカデミー賞において新人俳優賞を受賞。名実ともに日本映画界のトップランナーへと躍進する決定打となったのです。