本作が初めて世に放たれたのは2019年、アメリカで開催された世界屈指のアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(Art Basel Miami Beach)」のペロタン・ギャラリーブースでした。当時、食料品店でわずか数十セントで購入された普通のバナナを、市販のダクトテープで壁に貼っただけの状態で展示され、会場には一目見ようと数千人の群衆が押し寄せるパニック状態を引き起こしました。
作者のマウリツィオ・カテランは、過去にも18金でできた使用可能な便器の彫刻『アメリカ』など、痛烈なブラックユーモアで美術界を挑発し続けてきた作家です。カテラン本人の発言や関係者の証言によると、この作品には以下のような意図と批評性が込められています。
- アート市場の投機性への皮肉:「どんなものでも有名作家の文脈に乗れば大金で取引される」という現代アートバブルへの痛烈な風刺。
- グローバル資本主義の象徴:世界中で最も標準化され、安価に大量消費される果物である「バナナ」をあえて選定した記号論的アプローチ。
- 価値の不条理性の可視化:腐敗して消え去る果物と、数億円の価値が不変として扱われる金融的狂気の対比。