父である田宮二郎が遺した足跡を語る上で欠かせないのが、空前のヒットを記録した『必殺シリーズ』や、日本のTVドラマ史に金字塔を打ち立てた『新・白い巨塔』である。父が演じた財前五郎の威風堂々たる存在感や、裏稼業の冷徹さと情愛を同居させたキャラクター造形は、当時の視聴者の胸に強烈に焼き付いていた。
彼にとってこれらの名作群は、越えるべき壁であると同時に、役者としての美学を教えてくれる最高の教科書でもあった。父の代表作が放つ圧倒的な熱量と対峙しながら、自らの演じる作品においても「人間の持つ業や矛盾」をどのように表現するかを追求し続けた。父の遺産を安易に消費するのではなく、一歩引いた視点からその真髄を噛み締め、自らの芝居へと昇華させていく姿勢には、表現者としての高潔な誇りが漂っていた。