こうした急激なデジタル転換を指揮する経営トップ陣の動きに、永田町やメディア界からの熱い視線が注がれている。会長の稲葉延雄氏や、実務面を強力に牽引する副会長の井上樹彦氏を中心とする現体制は、ネット配信本格化に向けた抜本的な役員人事の再編に着手した。
従来、理事情報や組織人事といえば、各番組制作部門や報道部門の出身者による生え抜きが固めるのが常套であった。しかし、今回の異変はデジタル技術や経営戦略、法務リスクに長けた人材を重用する方針へと舵を切った点にある。業務のデジタル化を主導できる実務派への権限集中を進める一方で、旧態依然とした組織文化との間で軋轢が表面化するケースも散見される。
さらに世間の厳しい目が向けられているのが「役員報酬」の妥当性だ。受信料によって支えられている公共放送として、理事をはじめとする幹部らの報酬水準や手当の透明化は常に議論の的となってきた。総務省からのコスト削減要請に応えつつ、民間IT大手との争奪戦に勝てる優秀な経営人材を保持するという二律背反の課題に対し、NHK経営委員会と執行部はいかに納得感のある報酬体系を設計できるか、市場と国民からの検証が行われている。