カネミ油症を「皮膚の病気」だと誤解している人は少なくない。だが、実際には循環器・神経・内分泌・免疫系へと波及する全身性の複合中毒であり、患者たちは発症から50年以上を経た今も、日常生活のあらゆる場面で後遺症と向き合っている。
特に患者の訴えとして多いのは、四肢末端のしびれ感・感覚鈍麻だ。冷えや痺れは冬場に悪化し、箸の操作や歩行に支障をきたす高齢患者が増えている。また、目の異常としては、まぶたの裏にチョコレート色の分泌物が溜まる「マイボーム腺分泌亢進」や、視力低下、眼精疲労が知られ、初期症状としても記録されている。さらに深刻なのが、妊娠中の母親から胎児へとPCB・ダイオキシンが移行することによる胎児性油症の存在である。胎児の段階で曝露した子どもは、出生時に皮膚の色素沈着や歯肉の褐色変化を示すことがあり、成長後の発達や免疫機能への影響も指摘されてきた。
報道各社の取材データによると、患者の多くは「見た目にはわからない不調」を周囲に理解されず、二次的な精神的苦痛に長年苛まれてきた。症状写真が可視化する皮膚の異変は氷山の一角にすぎず、見えない内部障害こそがカネミ油症の本質であることを、2026年のメディアは改めて伝え直す責任を負っている。