スタジオジブリ作品のキャスティングといえば、日本テレビのスタジオやジブリ社屋での厳格なオーディション、あるいはプロデューサーの直感が大きく左右することで知られています。なぜ当時、全国区の知名度がまだ発展途上であった大泉洋さんが『千と千尋の神隠し』の重要な役に選ばれたのでしょうか。
関係者の回顧録や公式インタビューによれば、発端はスタジオジブリのプロデューサー・鈴木敏夫氏が『水曜どうでしょう』の大ファンだったことにあります。鈴木氏は深夜番組で見せる大泉洋さんの独特の語り口、軽妙なリアクション、そしてどこか哀愁を漂わせながらも圧倒的な人間味を放つキャラクターに強い関心を示していました。
当時のアフレコ現場で宮崎駿監督が求めていたのは、「単なるアニメ声の美しさ」ではなく「生活臭と欲深さ、そして憎めない愛嬌が同居した生々しい大人の声」でした。声優専業ではない舞台俳優・タレント特有の泥臭い芝居を好む宮崎監督の演出方針に、大泉洋さんの持つ声質とリズム感が完璧に合致したのです。