家庭用のガスコンロやIHクッキングヒーターと一般的なフライパンを使って、厚さ2〜2.5cm程度の厚切りステーキを完璧なミディアムレアに焼き上げる手順には、厳格な物理法則が存在します。
多くの人が犯す最大の誤りは「冷蔵庫から出して冷たいまま焼き始めること」です。中心が冷えた状態の肉をフライパンに乗せると、外側だけが焦げて中心は冷たい生焼けになってしまいます。
ステップ1:常温戻しと塩振りのタイミング
調理開始の30分〜1時間前(冬場は1時間、夏場は30分)に冷蔵庫から取り出し、室温に戻します。塩を振るタイミングは「焼く直前」が鉄則です。塩を振ってから時間を置くと、浸透圧によって肉内部の貴重な水分が表面に流出し、パサつきの原因となります。
ステップ2:強火でメイラード反応を起こす
フライパンに牛脂またはサラダ油を引き、煙がうっすら立ち上る程度までしっかり強火で熱します。肉を入れたら動かさず、強火〜中強火で約1分〜1分30秒焼き付け、表面にカリッとした香ばしい焼き色(メイラード反応)を形成します。
ステップ3:裏返して弱火でじっくり熱を伝える
焼き色がついたら裏返し、火力を弱火に落として約1分〜1分30秒加熱します。肉の厚みが2.5cmを超える場合は、側面(脂身の部分)もトングで挟んで各面15秒ほど軽く焼き色をつけます。
ステップ4:アルミホイル余熱調理(最重要工程)
フライパンから取り出した肉をすぐに切ってはいけません。加熱直後は熱によって膨張した肉汁が中心部に集まっており、包丁を入れた瞬間にすべてまな板へ流れ出てしまいます。二重にしたアルミホイルで肉をふんわり包み、フライパンで焼いた合計時間と同じ時間(約3分〜5分)休ませます。
この余熱調理の間に、表面の熱が中心部へと穏やかに伝わって中心温度が55℃へと到達し、同時に暴れていた肉汁が筋繊維全体へと再吸収され、どこを切ってもジューシーな状態が完成します。