鉄道における座席の歴史を紐解くと、居住性と乗車定員のせめぎ合いの歴史でもあった。古くから近郊型電車に採用されてきた4人掛け対面式のボックスシートは、旅情を誘う一方で、混雑時には通路が狭くなり乗降の妨げになりやすいという難点を抱えていた。一方、進行方向に座席向きを変えられる転換クロスシートは関西の私鉄やJR西日本を中心に発展し、圧倒的な居住性で利用者の支持を集めてきた。
この2つの形式の長所を融合させ、混雑度に応じて座席の向きを90度回転させる革新的な試みが、1990年代に動き出した近畿日本鉄道のL/Cカー開発プロジェクトである。ラッシュ時はロングシートとして大容量の輸送力を確保し、データイムや送迎時間帯にはクロスシートに転換して快適性を提供するという画期的なデュアルシート構造は、その後の大手私鉄の着席サービス車両の直系のご先祖様となった。