子供の一般的な溶連菌感染症(咽頭炎)は抗生剤の服用で軽快する良性疾患であるのに対し、なぜ劇症型はこれほど恐ろしい転帰をたどるのか。その理由は、劇症型を引き起こすA群溶連菌が放出する「スーパー抗原」にあります。
体内へ侵入した溶連菌は、大量の毒素(外毒素)を分泌します。このスーパー抗原は、人体の免疫システムを異常活性化させ、通常なら制御されるはずの免疫物質(サイトカイン)を短時間で過剰放出させます。いわゆるサイトカインストーム(免疫暴走)です。
これにより全身の毛細血管が一斉に弛緩して血管壁の透過性が破綻。血液中の水分が血管外へ漏れ出し、急速な血圧低下(感染性ショック)が引き起こされます。主要な臓器へ血液が送られなくなる結果、発症からわずか24〜48時間以内に急性腎不全、肝不全、播種性血管内凝固症候群(DIC)を併発し、多臓器不全へと追い込まれます。これが、搬送時に「歩いて救急外来に来た患者が、数時間後には心停止に至る」と言われる急変のメカニズムです。
厚生労働省の追跡調査に基づく致死率の真相は、発症者の約30%〜40%が死に至るという過酷な数字です。現代の高度集中治療室(ICU)で最高峰の医療介入を行っても、発症スピードが治療開始のタイミングを追い越してしまった場合、救命は極めて困難を極めます。