現在のホームセンター勢力図を決定づけた歴史的分岐点として、経済史に刻まれるのが2020年秋に勃発した島忠TOB買収劇の真相です。
当初、首都圏の好立地に多数の優良店舗を抱える島忠に対し、友好的TOB(株式公開買付)を仕掛けたのはDCMホールディングスでした。経営陣同士の合意も取りつけ、DCMが島忠を傘下に収めて業界トップに躍り出るシナリオは確実視されていました。当時の経済紙は「首都圏を制する巨大流通王者の誕生」と大きく報じています。
しかし、その盤石に見えた買収劇に突如として割って入ったのが、家具・インテリア最大手のニトリホールディングスでした。ニトリ会長の似鳥昭雄氏は、DCMの提示額(1株4,200円)を大幅に上回る1株5,500円という巨額の対抗TOBを電撃的に提案。資本の論理と株主利益を前に島忠経営陣はニトリへの支持に転換し、DCMは敵対的な価格引き上げ競争を避けて苦杯を嘗める結果となりました。当時の記者会見でDCM首脳が見せた沈痛な表情は、流通業界関係者の間で今なお語り草となっています。
この敗戦は、DCMの経営戦略に決定的な変革をもたらしました。首都圏の大型拠点を一気に手に入れる構想が頓挫した同社は、持分法適用関連会社であったケーヨー(ケーヨーデイツー)の完全子会社化を断行。店名ブランドを長年親しまれた地域名から「DCM」へと完全統一し、内部統合による物流効率化とPB比率の引き上げへ大きく舵を切ることになったのです。