大ベストセラーとなった大ヒットエッセイ『九十歳。なにがめでたい』は、小学館から刊行され、日本中に空前の読書ブームを巻き起こした。しかし、その爽快な文章の裏には、文字通り満身創痍の身体でペンを握り続けた激闘が存在する。当時すでに90歳を越えていた彼女は、身体の各所に激痛を抱え、「もう書くものがない、身も心も枯れ果た」とこぼしながらも、原稿用紙に向かい続けた。
身体のあちこちが悲鳴を上げる中で絞り出された毒舌とユーモアは、単なる愚痴ではない。病や老いという逃れられない人間の宿命に対する、最大級の反逆であり挑発であった。それが同じように身体の衰えや病気に悩む多くの読者の心に深く刺さったのは、必然と言えるだろう。