松山市一番町の緩やかな坂道を上ると、城山の豊かな緑に溶け込むように現れるコンクリート打ち放しの建築。それが坂の上の雲ミュージアムです。世界的建築家である安藤忠雄氏が設計を手掛け、建物全体が「坂の上の雲」という文学テーマを立体的に体現する構造になっています。
最大の特徴は、敷地の形状を極限まで活かした平面三角形の構造です。地上4階・地下1階からなる建物内部に入ると、外観からは想像できない開放的な吹き抜け空間が広がります。館内には2階から4階へと緩やかに続くスロープが張り巡らされ、来館者は展示を鑑賞しながら、まさに「坂道を上っていく」感覚でフロアを移動していきます。
建築工学上のハイライトとして専門家からも絶賛されているのが、2階と3階、3階と4階をつなぐ「空中階段」です。支柱を一切使わず、プレストレストコンクリート技術を駆使して斜めの梁だけで片持ち支持(キャンティレバー)されたこの階段は、まるで空間に浮遊しているかのような錯覚を与えます。無駄を極限まで削ぎ落とした幾何学的な美しさと、窓外に広がる松山の自然光が織りなす陰影は、歩みを進めるたびに異なる表情を見せてくれます。