短距離走の歴史において、50メートルは主に冬季室内シーズンの一部の大会でのみ実施される極めて特殊なスプリント種目です。現在の室内大会の標準種目が60メートルへ移行したこともあり、50メートルの歴代記録は極めて限られたレジェンドたちの記録が今なお燦然と輝いています。
男子の歴代上位には、前述のドノバン・ベイリーやモーリス・グリーンに加え、歴史的スプリンターたちの名前が並びます。また、女子50m世界記録に目を向けると、ロシアのイリーナ・プリワロワが1995年2月9日にスペイン・マドリードでマークした5秒96が不動の頂点として君臨しています。女性でありながら6秒の壁を突破したこの記録は、30年以上が経過した現在においても誰一人として破ることができていません。
これに対する50m走日本記録は、2008年北京五輪男子4×100mリレー銀メダリストの朝原宣治が2002年2月24日、フランス・リエヴァンの国際室内競技会で記録した5秒75です。朝原は抜群のスタートダッシュと卓越した加速技術を武器に世界の強豪と渡り合いました。この5秒75というタイムは、当時の世界室内ランキングでもトップクラスに食い込む快挙であり、四半世紀近くにわたり日本スプリント界で破られていない不滅の金字塔です。