一部のネットコミュニティやSNS上では、ツアー開幕直前に「髙橋海人の意向が強まりすぎて、ダンスナンバーばかりの玄人向けセトリになってしまうのではないか」「従来のキンプリらしいキラキラした王道ソングが減るのではないか」という懸念が囁かれていました。
しかし、実際のステージはそのような短絡的な懸念を完全に払拭するものでした。ここに、演出家としての髙橋海人が持つ卓越したバランス感覚があります。
第一に、彼がセットリストに組み込んだのは尖ったダンスチューンだけではありません。アコースティックギターを手に取り、永瀬廉と目を合わせながら歌い上げるパートでは、初期から大切にしてきたメロディックなハーモニーを極めて丁寧になぞっています。ダンスで観客の緊張感を極限まで高めた直後に、あたたかなミディアムテンポの楽曲で会場全体を包み込むという「緊張と緩和(カタルシス)」のサイクルが綿密に計算されているのです。
第二に、過去の6人体制・5人体制時代の代表曲をあえて排除するのではなく、2人の現在の声質と表現力にフィットするようコード進行やボーカルパートを再編纂しています。ネット上で散見される「過去曲の封印」という誤解に対し、彼らは音楽的なアップデートという最も誠実な回答を提示しました。