赤い服を着た陽気な老人のイメージは、19世紀から20世紀にかけて商業的に広まった比較的新しいものだ。しかし、この地に生きた実在の聖ニコラオスは、貧しい人々に密かに財産を分け与え、無実の罪を着せられた囚人を救ったとされる情熱的な改革者だった。
教会内部に残る11世紀から12世紀のフレスコ画には、鋭い眼光で民衆を見つめる無欲な聖人の姿が描かれている。商業化された現代のクリスマス像とは対照的に、この聖堂が放つ空気はどこまでも荘厳で静謐だ。巡礼者のひとりは「ここに来ると、彼が単なるおとぎ話の主人公ではなく、厳しい時代を生き抜いた血の通った人間だったと実感できる」と静かに語った。