居酒屋や割烹でひれ酒を注文すると、店員が運んできた器のフタを少しずらし、マッチやライターでパッと火を灯す場面に出くわします。青い炎がゆらめく様は非常に幻想的ですが、この着火には明確な2つの科学的理由が存在します。
第1の理由は、器の中に充満したアルコール揮発ガスを燃焼させ、口当たりを劇的にまろやかにすることです。ひれ酒には通常よりも高い温度の日本酒が使われるため、アルコールのツンとした刺激臭が立ちやすくなります。炎で表面のアルコールガスを瞬間的に飛ばすことで、トゲのない柔らかな飲み口に仕上がります。
第2の理由は、魚特有の生臭さを完全に打ち消すためです。アルコール蒸気とともに魚の微量な臭み成分が揮発し、一気に燃え尽きることで、ヒレ本来が持つ芳醇で香ばしいロースト香だけが際立ちます。なお、炎は数秒で自然に消えるか、フタをサッとかぶせることで簡単に鎮火します。