荒野を彷徨うような精神状態に決定的な転機が訪れたのは1993年、舞台女優経験を持つ広田亜矢子との再婚だった。女優・広田レオナの従妹でもあり、芸能の厳しさと表現者の孤独を骨の髄まで理解していた彼女の存在は、佐藤の荒ぶる魂に初めて本物の停泊地を与えた。
所属事務所のテアトル・ド・ポッシュを拠点に、仕事選びと表現の純度を極限まで高めていく夫を、彼女は徹底した献身と自立心で支え続けた。前妻との別離で負った罪悪感と傷を包み込み、家族としての確固たる基盤を構築したことで、佐藤の演技からは焦燥感が消え、底知れぬ包容力と深みが宿るようになった。