角替和枝さんと柄本明の出会いは、若き日の演劇活動にさかのぼる。ふたりは劇団つかこうへい事務所などを通じて意気投合し、結婚。その後、柄本明が座長を務める「劇団東京乾電池」の中心メンバーとしても長年舞台に立ち続けた。
アングラ演劇の熱気に包まれた時代から、日本の演劇界を足元から支え続けたふたりの関係は、単なる夫婦にとどまらない。舞台上での対等な同志であり、お互いの演技論を忌憚なくぶつけ合える最良の理解者だった。自宅の食卓でも常に芝居の話が飛び交い、日常と演劇が分かちがたく結びついた生活を送っていたという。柄本明が時に苦悩するときも、角替さんの大らかな笑顔と肝の据わった言葉が、劇団と家庭の双方を揺るぎなく支え続けていた。