ネット上でしばしば議論を呼ぶのが、「はちみつには殺菌力があるため、歯磨き後に舐めて寝ても虫歯にならない」という言説です。この主張の虫歯のリスクと真偽については、エビデンスを慎重に見極める必要があります。
確かに純粋はちみつには、グルコースオキシダーゼという酵素が微量の過酸化水素(消毒成分)を生成する性質や、高浸透圧、グルコン酸による弱酸性環境など、強力な抗菌・静菌作用が存在します。ニュージーランド国立ワイカト大学のマヌカハニー研究をはじめ、ミュータンス菌の増殖を抑制するという学術報告が存在するのも事実です。
しかし、歯科臨床の現場での見解は極めて現実的です。はちみつの主成分は単糖類(果糖とブドウ糖)であり、口腔内に長時間糖分が停滞すれば、プラーク中の細菌にとって発酵性基質(エサ)となり得ます。唾液分泌が著しく低下する睡眠中に糖分を歯面に残すことは、エナメル質の脱灰リスクを高める危険を孕んでいます。
トラブルを避けるための確実な運用法は以下のいずれかです。
- 摂取後に歯を磨く:就寝の30分〜1時間前にはちみつを摂取し、その後通常通りブラッシングを行う。
- 白湯で完全に洗い流す:歯磨き後にどうしても摂取する場合は、口内に留めず速やかに飲み込み、水またはぬるま湯で口をゆすぐ。