参道を進むとまず目を奪われるのが、金箔と精緻な彫刻で彩られた国指定重要文化財「唐門(からもん)」です。1651年造営のこの門には、江戸初期の伝説的彫刻職人・左甚五郎作と伝わる「昇り龍・降り龍」が鎮座しています。毎夜水を飲みに不忍池へ通ったという伝説が残るこの龍は、頭を下げて描かれた「降り龍」こそが「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の教えを体現し、真の偉大な人物を表しているとされます。
唐門の奥に広がる「金色殿(社殿)」は、日光東照宮に比肩する豪奢な江戸初期権現造りの傑作です。外壁を取り囲む「透塀(すきべい)」には、上段に野山と水辺の鳥、下段には海川の魚類が驚くほど立体的に彫り込まれており、当時の職人技の極致を間近で観察できます。
さらに境内には、樹齢600年以上を誇る御神木「大楠(おおくす)」がそびえ立ちます。幹周り約8メートルを超える生命力の塊のような巨木は、触れることは叶わずとも、その前に立つだけで清浄な気に包まれる隠れた名所です。参道に並ぶ諸大名から奉納された200基以上の石燈籠や50基の銅燈籠も見応え十分で、江戸幕府の権威と崇敬の深さを今に伝えています。