近年頻発する親子心中や一家心中の根底には、個人の力だけでは抗いきれない構造的な社会問題が深く横たわっています。主な引き金として挙げられるのは、以下の要因です。
第一に、老老介護や重度障害を持つ子どもの将来を巡る悲観です。夜間の見守りや下の世話による慢性的な睡眠不足、自らの健康悪化、そして「自分が倒れたらこの子はどうなるのか」という将来への絶望が、親を極限状態まで追い詰めます。制度の狭間に落ちた家庭が地域社会から断絶されたとき、破局へのカウントダウンが始まります。
第二に、深刻な経済的困窮と多重債務です。事業の失敗やリストラ、物価高騰による生活破綻が引き金となり、家族全員で命を絶とうとする事案が発生します。この際に見られる心中事件の心理的背景として顕著なのが、「子どもをこの残酷な世に残していけない」という歪んだ保護責任感です。子どもを一人の独立した人格ではなく「自分の分身」と同一視してしまう意識が、無理心中という最悪の結末を招く大きな要因となっています。