是枝裕和監督と小久保利子のタッグは、現代映画史におけるひとつの到達点と言っていい。とりわけ濃密なヒューマンドラマを描く際、彼女が提示する配役案は、監督自身の構想すら軽やかに超えていく。
象徴的なのが『万引き家族』における子役たちのキャスティングだ。台本を渡さず、現場での対話を通じて生の感情を引き出す是枝組の手法に対し、小久保は「芝居の上手さ」ではなく「そこにいるだけで空気を変えてしまう存在感」を持つ子どもたちを見事に発掘した。技術で固められた子役ではなく、荒削りな生命力をスクリーンに定着させる眼力。この卓越した感覚が、世界を圧倒したリアリズムの基盤となっている。
『怪物』においても、繊細かつ不穏な空気を漂わせる少年たちの絶妙なキャスティングが物語の推進力となった。大物俳優のネームバリューに頼ることなく、無名の原石を主役に据えてなお成立させる勇気。それこそが、彼女が映画作家たちから絶大な支持を集める理由だ。