長きにわたる沈黙を破った最大の転換点は、JRAが総工費を投じて断行し、2023年10月に本格稼働を迎えた美浦トレセンの新坂路改修工事です。地下を大規模に掘り下げるという前代未聞の土木工事により、美浦の坂路は従来の18メートルから一気に高低差33.0メートルへと拡大。さらに最大勾配は栗東を上回る5.8%へと生まれ変わりました。
改修から時間を経た美浦・栗東勝率の最新動向を精査すると、その効果は極めて明白です。以前は年間重賞勝利数の約65%〜70%を栗東所属馬が独占し、勝率や複勝率でも関西馬が関東馬を圧倒していました。しかし現在、その差は誤差の範囲内にまで収斂しています。
日本ダービーや天皇賞、有馬記念といった最高峰の競走において、関東のトップ厩舎が堂々と主役を張るシーンはもはや日常茶飯事となりました。「美浦と栗東、どっちが強いのか?」というファンの問いに対する回答は、いまや「完全に互角の戦国時代」という表現が正確です。
現場調教師への取材記録によれば、「これまでは馬を本気で鍛え上げようとするとウッドチップコースで負荷をかけるしかなく、脚元へのリスクと隣り合わせだった。だが新坂路が完成したことで、故障リスクを抑えながら栗東と同等以上の負荷を心肺とトモにかけられるようになった」という声が多数上がっています。美浦坂路改修の効果は、単なる数字上の記録だけでなく、馬づくりのアプローチそのものを根本から変革させました。