爪の表面に現れる細い筋状の凹凸は、専門用語で「爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)」と呼ばれる。成人の爪は根元にある「爪母(そうぼ)」という組織で作られ、1日におよそ0.1ミリメートル、根元から先端まで約半年をかけて生え変わる構造を持つ。皮膚が年齢とともに水分を失ってシワを刻むのと同様に、爪甲縦条の根本的な原因も加齢に伴う組織の変化にある。
20代前半までの爪は、水分含有量が約12〜15%程度に保たれ、脂質やケラチンのバランスが整っているため表面が滑らかである。しかし、30代後半から40代を境に爪母細胞の機能が徐々に衰退し、細胞分裂のスピードにわずかなムラが生じる。この細胞増殖の不均一さに皮膚表面の皮脂分泌低下が重なり、爪の成長方向に沿って微細な溝が形成される。これが爪甲縦条の症状と特徴である。
さらに日常的な手指の乾燥もこの筋を際立たせる大きな誘因となる。食器用洗剤の頻繁な使用、冬場の外気、アルコールによる手指消毒の反復は、爪甲の角質細胞を繋ぎ止める脂質(セラミドなど)を容赦なく奪い去る。爪の縦筋と加齢・乾燥の関係は極めて密接であり、手の甲の小ジワと同じ自然な老化プロセスの現れと捉えるのが皮膚科学的な基本認識である。