物語の舞台となった東ゴルトー共和国の片田舎で、コムギは12人家族の貧困層として生まれ育ちました。視覚を失い、日常の生活能力すら覚束ない彼女にとって、唯一家族を養う手段が盤上遊戯「軍儀」の賞金でした。
作中で常に印象的なコムギの鼻水ですが、これには明確な演出意図と背景が存在します。一般的なフィクションにおけるヒロイン像からあえて徹底的にかけ離れた「みすぼらしさ」「無防備さ」を強調することで、暴力や美醜、権力といった俗世の価値基準とは無縁な純粋無垢さを際立たせています。さらに、全感覚と脳リソースのすべてを視覚ではなく軍儀の盤面に注ぎ込んでいるがゆえの、極限の過剰集中状態を表す象徴的な描写でもあります。
アニメ版(日本テレビ版)でコムギ役を演じた声優・遠藤綾さんの怪演も見逃せません。地方訛りの独特なイントネーションと、軍儀を打つ瞬間に見せる研ぎ澄まされた凛々しさのギャップを完璧に演じ分け、視聴者に強烈なリアリティと感動を植え付けました。