脅迫メールの送信元を追う捜査員が最初に行き当たるのが、高度な通信匿名化技術の壁だ。犯人の多くは、通信経路を世界中に分散したボランティアサーバー経由で複雑に迂回させるTor Network(トーア・ネットワーク)を利用している。データが幾重もの暗号化レイヤーで保護された暗号化通信であるため、途中のノードを一つ二つ解析したところで、元の送信者に辿り着くことは不可能に近い。
これに加え、エンドツーエンドの強力な暗号化を売りとする電子メールサービス「ProtonMail」などの悪用も後を絶たない。スイスなど厳格なプライバシー保護法制を持つ国にサーバーが設置されている場合、日本の警察・捜査機関が国際捜査共助の手続きを取っても、情報開示には高いハードルと膨大な月日が費やされる。犯行グループは、この法制度の隙間と技術的な匿名性を狡猾に組み合わせて逃げ道を作っているのだ。