四肢が形成される胎生4週から8週頃の受胎初期において、指の原基が分離・分化するシグナル伝達にわずかな変化が生じることで、指が余分に分かれて形成される状態を多指症と呼びます。知能や内臓の発達に直接的な悪影響を及ぼすものではなく、手や足の局所的な形態異常として生じるケースがほとんどです。
日本国内の疫学データによると、多指症の発生頻度は約1,000人から2,000人に1人と報告されています。これは先天奇形全体のなかでも非常に高い頻度です。手の多指症においては、発生する部位によって以下のように分類されます。
- 母指多指症(橈側多指症):親指側に過剰な指が生じるタイプ。日本を含む東アジア人種において圧倒的に多く、国内の手の多指症の約80〜90%を占めます。
- 小指多指症(尺側多指症):小指側に過剰な指が生じるタイプ。アフリカ系人種に多く見られる特徴があり、日本では比較的稀です。
- 中央部多指症:人差し指、中指、薬指の間に過剰指が存在するタイプで、発症頻度は極めて低いです。
保護者が最も心を痛めるのが「遺伝したのではないか」「妊娠中の行動に問題があったのではないか」という自責の念です。しかし、日本人に好発する孤発性の母指多指症の大部分は、遺伝性を持たない偶発的な変異によって生じます。一部に常染色体顕性遺伝(優性遺伝)を示す家系や特定の症候群に伴うケース(遺伝確率50%)も医学的に存在しますが、これは全体のごく一部に過ぎません。妊娠初期の食事や日常生活、服薬などが直接の原因となることも基本的に否定されています。
超音波検査技術の進歩に伴い、妊娠18週〜22週頃の精密胎児エコー(胎児ドック)によって出生前に多指症が判明する事例が増加しました。エコー画面上で胎児が指を固く握りしめている場合は出生まで判明しないことも珍しくありませんが、事前に告知を受けた場合であっても、産科医や小児形成外科医から正確な医学的説明を受けることで、出生後の治療計画を冷静に整える親が増えています。
なお、指がくっついて生まれる「合指症」とは概念が異なります。指の数が多いものが多指症、隣り合う指が癒合しているものが合指症であり、これらが同時に混在する「多合指症」という病態も存在します。