街頭における布教の風景にも、両者の組織思想が鮮明に表れています。どちらも「布教を義務付ける宗教」ですが、その手法と担い手の内実には大きな隔たりがあります。
モルモン教宣教師自転車の理由:2年間の専任ボランティア
モルモン教の青年たちが2人1組で黒いネームプレート(「エルダー〇〇」と表記)を着け、自転車で走り回る光景は日本全国の都市部で定着しています。彼らの多くは18歳から20代前半のアメリカ人を中心とした青年たちです。
この活動は「専任宣教師」と呼ばれ、男性は2年間、女性は18ヶ月間、学業や仕事を休学・休職して参加します。特筆すべきは、渡航費や日本での生活費を教団から受け取るのではなく、本人やその家族が全額自己資金を積み立てて参加している点です。自転車を使用する理由は極めて合理的で、限られた生活費のなかで効率よく広範囲の地域を巡回し、住民と対話するためです。彼らは英語教室などを無料で開催しながら地域社会に溶け込もうとします。
エホバの証人の布教:戸別訪問からキャスター付き「カート伝道」へ
対するエホバの証人は、地域住民そのものが伝道者です。かつては日曜日や平日の日中に二人一組で各家庭のインターホンを鳴らす「戸別訪問(家から家への奉仕)」が主流でした。しかし、オートロックマンションの増加や防犯意識の高まり、さらには強引な勧誘への苦情を受け、近年急速にシフトしたのが駅前や人通りの多い交差点に立つ「カート伝道(スタンド展示)」です。
自前の宗教冊子『ものみの塔』や『目ざめよ!』を美しく陳列し、自分から通行人に声をかけることは控え、通行人が自発的に興味を持って冊子を手に取るのを静かに待ちます。信者には毎月一定の布教時間(開拓奉仕などの目標)が課せられてきた歴史があり、組織への忠誠心と自らの「ハルマゲドンからの救い」のために、膨大な時間をこの活動に捧げ続けています。