1979年に公開され、今なおアニメ映画の金字塔として語り継がれる『ルパン三世 カリオストロの城』。オープニング直後のカーチェイスシーンで、クラリスの駆るシトロエン2CVを追う悪漢のグラントゥーリズモに対し、ルパンと次元が搭乗する黄色いフィアット500が見せた疾走劇は世界中の観客を釘付けにしました。
本来のフィアット500(500F型など)は、空冷直列2気筒499ccエンジンをリアに搭載し、最高出力はわずか18馬力程度、最高速度も時速100kmに達するかどうかという慎ましい大衆車です。大の大人が2人乗り込み、トランクやシート後方に盗難用具やカップ麺を満載した状態では、坂道を上るのすら一苦労なのが実車の現実でした。
しかし、劇中のルパン車には驚くべき裏設定が施されていました。車内の助手席足元、あるいはインパネ下部にある謎めいたレバーをルパンが力強く引き倒すと、リアエンジンルーム内で機械仕掛けが猛然と駆動し、専用のスーパーチャージャー(過給機)が強制起動します。排気音は雷鳴のような重低音へと変貌し、リアタイヤが白煙を上げてアスファルトを削り、垂直に近い崖を駆け上がって敵の車を抜き去るという驚愕のハイパフォーマンスを発揮するのです。
設定資料や作画スタッフの述懐によると、この車は外見こそ泥だらけのフィアット500ですが、中身はルパンと次元の手によってアバルト製レーシングパーツや特殊な過給装置が組み込まれた完全な「スリーパー(羊の皮を被った狼)」仕様。屋根にはキャンバストップを備え、そこから身を乗り出した次元大介が愛用のコンバットマグナムを構えて精密射撃を行う構造は、機能美とドラマツルギーが見事に融合した傑作デザインといえます。