「引っ越し!引っ越し!さっさと引っ越し!しばくぞ」というフレーズの元ネタは、2005年4月に奈良県平群(へぐり)町で表面化した「奈良騒音傷害事件」です。連日テレビのニュース番組や情報番組が、住宅街のベランダから隣家に向かって大音量の音楽を流し、布団叩きを振り回しながら怒号を浴びせる主婦の姿をトップニュースで報じました。
メディアは彼女を「騒音おばさん」「布団たたきおばさん」「引っ越しおばさん」などとセンセーショナルに名付け、その奇怪な振る舞いを劇場型エンターテインメントのように消費していきました。リズミカルに怒鳴る独特の語感とインパクトのある動きは、当時急速に普及していたインターネット掲示板や動画共有サイトで瞬く間に格好の素材となります。
ニコニコ動画やYouTubeなどの黎明期には、彼女の音声や映像をサンプリングした音源MADやリミックス楽曲が大量に制作・投稿され、何百万回も再生されるネットミームへと変貌を遂げました。事件を知らない若い世代にも「有名なネットスラング」として定着した背景には、テレビメディアと初期インターネット文化の過激な増幅作用がありました。