ネット上の簡易レッスン動画などで頻繁に見られる「膝を胸まで高く引き上げましょう」という指導は、初心者にとって足がもつれる最大のトラップになり得ます。
生体力学的な観点から見ると、膝を過度に高く持ち上げると骨盤が後傾し、重心が後ろへ逃げてしまいます。その結果、次に足を下ろすまでの滞空時間が長くなりすぎて、高速なビートにテンポが追いつかなくなります。膝を持ち上げる高さは「太ももが床と平行になる程度(角度にして約90度)」で十分であり、むしろ意識すべきは引き上げる高さではなく、「軸足を後ろへいかに素早く引くか」という引き足のスピードです。
また、「靴底がゴムで滑らないからできない」というのも部分的な誤解です。プロダンサーはグリップの強いスニーカーでも問題なくステップを踏めます。摩擦を克服する鍵は靴の素材ではなく、スライドさせる瞬間に「足裏にかかる荷重を一瞬だけ20〜30%まで抜く抜重(ばつじゅう)の技術」にあります。