日本の愛好家の間で今、最も熱い議論を呼んでいるのが「北部ハノイ風(フォー・バク)」と「南部ホーチミン風(フォー・ナム)」のどちらを支持するかという問題だ。
ハノイ風は、シンプルさを極限まで追求する。澄み切った牛骨スープに、塩とわずかな調味料、そして肉とネギだけを合わせる。余計なハーブや甘みは一切排除し、スープの純度で勝負するスタイルだ。一方のホーチミン風は、スパイスの華やかな香りとほのかな甘みが特徴で、バジルやノコギリコリアンダーといった大量の生ハーブ、さらには甘辛いソースを自分で加えながら「味を育てる」楽しさがある。
かつて日本のエスニックレストランで提供されていたのは、この両者を曖昧に混ぜ合わせた「日本向けアレンジ」が主流だった。しかし現在、こだわり抜いた専門店は明確にどちらかのスタイルを掲げ、本場の味をそのまま再現している。