常同行動を巡って最も多く交わされる議論が「無理にでもやめさせるべきか、それとも温かく見守るべきか」という二者択一です。インターネット上では「甘やかさずに毅然とやめさせるべきだ」という根性論的な言説から、「本人の個性なのだから一切介入してはならない」という極論まで散見されます。しかし、臨床現場における最新の合意は極めて明確です。
「原則として、力づくでやめさせてはならない。ただし、身体的危険や重篤な社会的不利益を伴う場合は、代替行動への移行を図るべきである」
無理やり押さえつけたり、大声で叱責して動作を阻止した場合、どのような事態が起きるでしょうか。本人は情動を安定させる唯一の手段を暴力的に剥奪されることになります。その結果、行き場を失った過剰なエネルギーは、さらに危険な「自傷行為(頭を床に叩きつける、皮膚を噛みちぎる)」や「他害行動」、あるいは激しいパニックや不登校・うつ病といった重篤な二次障害へと発展します。
対応方針を分ける具体的な判断基準は以下の通りです。
【介入を急ぐ必要がないケース】
- 身体への危害がなく、周囲に実質的な迷惑をかけていない(手をひらひらさせる、自室でロッキングする)。
- 一定時間行うと本人が満足し、次の活動へ自然に移行できている。
- 緊張をほぐすための前哨動作として機能している。
【積極的な介入・専門的対処が必要なケース】
- 自傷・他害がある:爪剥ぎ、頭突き、眼球圧迫、噛みつきなど、出血や骨折、恒久的な身体損傷のリスクがある場合。
- 日常生活が破綻している:常同行動に没頭するあまり、食事や睡眠、排泄などの生命維持行動が取れない。
- 社会生活から完全に孤立する:公衆の面前で性器に触れる、他人の身体を触り続けるなど、著しい社会的拒絶を招く場合。