英語を学び始めた人が「余裕がない」を辞書で引くと、真っ先に登場するのが「cannot afford」です。そのため、時間が足りない時にも「I cannot afford time.」と言ってしまったり、疲労困憊している時に「I cannot afford to think.」と口にして怪訝な顔をされたりするケースが後を絶ちません。
大手グローバルコンサルティングファームでマネージャーを務める関係者は、現場でのリアルな体験をこう語ります。「非ネイティブの部下が業務依頼に対して『I can't afford it.』と即答した際、ネイティブのクライアントが一瞬凍りついた場面がありました。affordには『金銭的に買えない』という原義に加え、『それをするだけの重大な損失に耐えられない』という重いニュアンスが含まれるため、単に手が離せないだけなのに、まるでプロジェクト自体を全否定されたかのように響いてしまったのです」
英語におけるcannot afford 使い方とニュアンスを正しく把握するには、その語源と文脈を理解する必要があります。affordは基本的に「何かを実行した結果として生じる代償(金銭・時間・リスク)を支払う余力がある」ことを意味します。
したがって、「We cannot afford to make a mistake at this stage.(この段階でのミスは絶対に許されない・リスクを冒す余裕はない)」というビジネス表現としては極めて自然ですが、同僚から「今日のランチ行ける?」と聞かれて「I cannot afford it.」と返せば、相手は「金欠でランチ代が出せない」と解釈します。「忙しくて時間の余裕がない」と伝えたい場合には、文脈のボタンの掛け違いが起きてしまうのです。
また、空間的な空きを意味する「room」を安易に使って「I have no room in my brain.」などと直訳するミスも散見されます。ネイティブの日常感覚では、状況の原因がどこにあるのかを切り分けて表現することが、円滑な人間関係を築くための第一歩となります。