昭和40年代、日本中を熱狂させた「ケンとメリーのスカイライン」のCMは、都市の生活者に「手に入れた愛車で遠く広大な大地へ旅立つ」というモビリティの自由を提示しました。当時CMを見て憧れを抱いた世代が、定年後の記念旅行や往年の旧車ツーリングでこの地を訪れる姿は今も絶えません。
しかし、半世紀の時を経て、旅行者に求められる倫理は大きく変化しました。かつてのように「自由気ままに踏み込み、消費する観光」の時代は終わりを告げ、2026年の今、求められているのは「地域生産者の生業に敬意を払い、風景を静かに享受する観光(リスペクト・ツーリズム)」です。
【プロの視点】訪問に向いている人・慎重になるべき人の判断基準
- 深く満足できる人:
- 昭和の自動車文化、広告史、日産スカイラインの軌跡に思いを馳せたい人
- 「農業景観の美しさ」を理解し、定められた見学エリアから静かに佇まいを愛でられる人
- 周辺のカフェや道の駅など地域経済への還元を意識して旅を楽しめる人
- 再考または意識改革が必要な人:
- SNS上の「映え写真」のためなら畑に足を踏み入れたり路肩駐車をしても構わないと考える人
- アミューズメント施設のような過剰な商業設備やエンタメ性を単独の木に期待している人
- 短時間で駆け巡るスタンプラリー的な訪問で、農業車両への配慮ができない人
ケンとメリーの木は、名車文化のノスタルジーを伝える記念碑であると同時に、美瑛の大地を耕し続けてきた農家の方々の寛容さによって保たれている「生きた文化遺産」です。その重みを噛み締めながらシャッターを切ることこそが、この木に対峙する真の作法といえます。