ネット上の情報や一部の出版物には、依然として科学的根拠が乏しい俗説が散見されます。読者が後悔しないために見極めるべき盲点を整理します。
第1の落とし穴は、「脳トレさえすれば認知症は100%防げる」という極端な予防言説です。書店に並ぶ認知症予防トレーニング本の中には、計算ドリルやパズルを過剰に推奨するものがあります。もちろん知的好奇心の維持や前頭葉の刺激には一定の意義が認められているものの、アルツハイマー病などの病理学的変化を単一のパズルだけで完全に抑止できるわけではありません。近年では、有酸素運動や地中海式食事法、難聴の早期治療、社会的孤立の防止といった多面的なライフスタイル改善こそが国際的なエビデンス(ランセット委員会報告など)で立証されています。偏った「脳トレ信仰」に過度な期待を寄せるのは禁物です。
第2の盲点は、認知症初期症状対応本を手に取るタイミングの遅れです。「年のせいだろう」と放置されがちな軽度認知障害(MCI)の段階では、日常のちょっとした変化――料理の味付けが変わる、同じ調味料を何本も買い込む、趣味に急に関心を失う――などのサインが現れます。初期症状をただの物忘れと混同したまま数年を過ごしてしまうと、2026年現在保険適用が拡大している早期治療薬の投与適期を逃す事態になりかねません。初期症状のチェックリストを客観的に掲載している良書を早期に手元に置くことが、予後を左右する重大な分岐点となります。