ネット上の情報空間には、本作に関して事実とは異なる言説が散見されます。正確な歴史理解のために、代表的な誤解を検証・是正しておきます。
第1に、「『江梨子』のヒットにより橋幸夫は完全に股旅歌謡をやめた」という説ですが、これは明白な誤りです。橋幸夫はその後も股旅ものを歌い続け、双方のジャンルを自在に行き来する唯一無二のマルチプレイヤーとして活躍しました。歌謡界における「二刀流」の先駆けであった事実を見落としてはなりません。
第2に、「映画『江梨子』で倍賞千恵子は主題歌もデュエットしていた」という混同です。映画内での息の合った共演があまりに印象的だったため、デュエット曲と誤解されがちですが、レコードとしてリリースされた本曲は橋幸夫の完全なソロ歌唱です。吉永小百合との『いつでも夢を』のイメージが後年になって記憶の中で交差した結果生じた、典型的な認知の歪みといえます。