消費者はなぜ、明らかに1人前の許容量を超えていると知りながら、ポテナゲ大ではなく「ポテナゲ特大」に手を伸ばしてしまうのでしょうか。ここには、ファストフード大手が巧みに設計した行動経済学のメカニズムが働いています。
その代表例が「アンカリング効果」と「極端性回避の逆転」です。単品積算価格「1,500円」という高額な基準値(アンカー)を提示された直後、950円という3桁のプライスを見せられると、人間の脳は直感的に「今買わなければ550円も損をする」という損失回避バイアスに囚われます。大と特大の差額がわずか350円であることも、「たった数百円でポテトが丸々1個増えるなら、特大にしないと勿体ない」という思考へ消費者を誘導します。
さらに現代の世相を反映した「ギルティプレジャー(背徳の快楽)」の消費心理も見逃せません。長引く実質賃金の伸び悩みや日々のストレス社会において、1,000円札1枚でテーブル一杯の揚げ物を並べる体験は、手軽に得られる最大の非日常的快楽として機能しています。「家族や友人とシェアする目的で買った」という名目を作り出すことで、ハイカロリーを摂取することへの罪悪感を心理的に希釈している側面も見受けられます。