今回の品薄現象は、単一のパニック買いによるものではありません。現場の物流データと卸売業者の証言を分析すると、「複合的な季節要因」と「生産・物流拠点の再編」という2つの歯車が噛み合ってしまったことが見えてきます。
まず直接的な引き金となったのが、春先の花粉大量飛散予測と新たな呼吸器感染症の注意喚起が同時期に重なった点です。例年の約1.8倍にのぼる突発的な需要が特定地域に集中しました。さらに背景には、国内外の工場で進められていた環境配慮型素材への生産ライン切り替えに伴う、一時的な稼働率の低下があります。
不織布マスクの心臓部であるメルトブロー不織布の流通自体は途絶えていないものの、完成品のパッキングから店頭配送に至るトラック輸送枠の逼迫が、店舗側の棚割りにタイムラグを生じさせています。つまり、国全体の在庫が完全に枯渇したわけではなく、店頭へのデリバリーが追いついていない局所的な供給不足が今回の売り切れの正体です。