『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』のクライマックスにおけるアムロとシャアの舌戦は、アニメ史上に残る思想的激突として知られています。隕石落としによって地球を寒冷化させ、全人類を宇宙へ強制移住させてニュータイプへの覚醒を促そうとするシャアに対し、アムロは真っ向から反論します。
シャアの「地球が持たん時が来ているのだ!」という言葉に対し、アムロが放った「エゴだよ、それは!」という叫びの意味と背景には、二人の人間観の根本的な隔たりが存在します。
シャアは理想主義的エリートとして、腐敗した人類に絶望し、急進的な暴力による「上からの革命」を企てました。一方のアムロは、自らも数々の絶望を味わいながらも、「人間の知恵はそんなものだって乗り越えられる」「世直しのことなど知ったことか!」と叫び、愚かさを抱えた市井の人々が自発的に変わっていく時間を信じようとしました。
ラストシーンでシャアが吐露した「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ!」という告白に対し、アムロが見せた「お母さん?ララァが?」という驚愕のリアクションは、二人が超人的な戦士でありながら、根本的な部分で満たされないトラウマを抱えた不完全な人間同士であったことを物語っています。