有原と日ハムファンの間に深い溝が生じた根本的な理由は、彼が海を渡った際の手続きにあります。海外FA権を取得しての移籍であれば、選手はどの球団とも自由に契約する正当な権利を持ちます。しかし有原の場合は、球団の保有権が残る段階で「ポスティングシステム」を行使してのMLB移籍でした。
2020年オフ、コロナ禍で球団経営が厳しさを増すなか、日本ハムはエースの夢を後押しする形で渡米を容認しました。テキサス・レンジャーズと結んだ契約は2年総額620万ドルで、日本ハムへ支払われた譲渡金は約1億3000万円程度と、かつてのダルビッシュ有や大谷翔平に比べて極めて少額でした。事実上の「球団の善意」によって送り出された経緯があったからこそ、ファン側には「復帰する際は古巣に戻るのが当然の礼儀である」という強い暗黙の了解が存在していたのです。
しかし、アメリカでの挑戦は試練の連続でした。2021年に右肩動脈瘤の手術を受け、長期離脱を余儀なくされます。メジャー通算でわずか3勝、防御率7点台と本来の投球を取り戻せないまま、2022年オフにFAとなりました。この過酷な挫折が、彼に「安定した複数年契約」と「万全の治療・登板環境」を最優先させる決定打となったことは想像に難くありません。