「清元宗家の生まれでありながら、なぜ音羽屋の尾上右近を名乗っているのか」という疑問を持つファンも少なくありません。その答えは、父方の歴史に刻まれた歌舞伎界屈指の血縁にあります。
右近の父方曽祖母(五代目清元延寿太夫の妻)は、明治・大正・昭和の歌舞伎界を代表する名優六代目尾上菊五郎の娘です。つまり、尾上右近は六代目菊五郎の直系の玄孫(やしゃご)にあたります。
右近は幼少期に曽祖父・六代目菊五郎の記録映像『春興鏡獅子』を見て歌舞伎役者を志したと語っています。名門・音羽屋の血を引く正統な後継者の一人として七代目尾上菊五郎の門下に入り、二代目尾上右近の名跡を許された経緯には、単なる弟子入りを超えた運命的な血の必然性があったのです。