富山常備薬が急成長した最大の起爆剤は、製品開発における極めて泥臭く、エモーショナルな創業理由にあります。同社の主力商品である『キミエホワイト』と『リョウシンJV錠』のネーミングには、創業者の実体験に基づく明確なストーリーが存在します。
同社が全国区の知名度を獲得する契機となった『キミエホワイト』は、創業者・大谷氏の実母である「キミエさん」のために開発された医薬品です。長年、農作業や家事で手を酷使し、シミや肌荒れに悩んでいた母の姿を見た創業者が、「なんとか母の肌をきれいにし、喜ばせたい」と製薬会社に処方開発を直談判したことが始まりとされています。
また、関節痛・神経痛緩和薬として大ヒットを記録した『リョウシンJV錠』の「リョウシン」は、文字通り「両親(りょうしん)」と「良心(りょうしん)」のダブルミーニングです。年齢を重ねて膝や腰の痛みに苦しむ両親へ向けた親孝行の想いと、製薬企業としての良心的なモノづくりを誓う意味が込められています。
一見すると感傷的なエピソードに思えますが、マーケティングの観点から見れば、シニア層の共感を鷲掴みにする強力な「ナラティブ(物語構造)」として機能しました。広告代理店任せの無機質なコピーではなく、創業者のパーソナルな体験を全面に押し出したことで、全国の高齢者層から絶大な信頼を獲得することに成功したのです。