建築家・青木淳が西澤徹夫とともに手掛けたリニューアルの真髄は、保存と刷新の境界線を極限まで溶かし去った点にある。本館のファサードを損なうことなく、地面を緩やかに掘り下げることで生まれたスロープ状の広場。そこから地下エントランスへと吸い込まれるようなアプローチは、訪れる人の歩幅や視線の高さを巧みにコントロールする。
古いスクラッチタイルの温もりと、新設されたミニマルな空間が一切の不協和音を生んでいない。帝冠様式を特徴づける重厚な大理石の大階段を上ると、一転して白を基調とした現代的な光庭が現れる。過去の記憶を展示するための舞台装置として、建築自体が雄弁に語りかけてくるのだ。
屋上に新設された「東山キューブ」のテラスも見逃せない。東山三十六峰の山並みを借景にした開放的なデッキに立つと、岡崎の自然と美術館がひとつの生命体のように溶け合っている事実に気づかされる。建物を歩くこと自体が一編の詩を読み進めるかのような空間体験は、建築ファンならずとも息を呑むに違いない。