この未曾有の統合劇を舵取りしてきたのが、國土典宏理事長だ。肝胆膵外科の世界的権威でありながら、長年NCGMのトップとして日本の医療行政と臨床現場の板挟みに立ち向かい続けてきた人物である。彼が掲げるのは、机上の空論を排した「現場主義の公衆衛生」に他ならない。
國土氏は常々、次の脅威に対する備えは平時の医療レベルの底上げからしか生まれないと語る。単に感染症だけを診る施設ではなく、高度な総合診療基盤を持った拠点であること。危機が起きた瞬間に一般診療を維持しながら、どれだけ柔軟に感染症専用病床を拡張できるか。その複雑なバランシングを成し遂げるため、同氏はハードウェアの整備だけでなく、組織内の意思決定ラインを大幅にスリム化させた。剛腕と称されるリーダーシップの裏には、患者と医療従事者の双方を絶対に孤立させないという強い信念が宿っている。