直線的で高規格、急カーブや急勾配が排除された走りやすい新東名において、なぜ甚大な多重事故やトラック事故の経緯が繰り返されるのでしょうか。新東名の事故原因と発生理由を掘り下げると、ドライバーの心理的盲点と物理的要因が複雑に絡み合っている実態が浮かび上がります。
第一の要因は、最高速度120km/h区間における「速度感覚の麻痺」です。新東名は道路幅が広く設計されているため、体感速度が実際の対地速度よりも20〜30km/hほど遅く感じられます。その結果、ドライバー自身は十分な車間距離を確保しているつもりでも、前走車の急な減速に対応するための制動距離が物理的に足りなくなります。時速120kmでの停止距離は約110メートルを超え、時速80km走行時のおよそ2倍に達します。
第二の要因として、静岡県内を貫く無数のトンネル出入口における環境激変が挙げられます。晴天の昼間、明るい屋外から暗いトンネル内へ進入する瞬間の「暗順応」、あるいはトンネルを抜けた直後の強烈な西日による「明順応」の遅れによって、ドライバーの視野が一瞬奪われます。過去の多重事故の詳細まとめを見ても、トンネルの出口付近で減速した車両の最後尾に後続車がノーブレーキに近い状態で追突し、そこへトラックが玉突き衝突を繰り返すパターンが極めて目立ちます。
さらに深夜から早朝にかけては、長距離輸送を担う大型貨物車の過密運行が重なります。法定速度を守って時速80〜90kmで走行するトラックと、追い越し車線を時速120km超で走行する一般乗用車との間に生じる「大きな速度差」が、無理な車線変更や死角への割り込みを生み、破滅的な大型衝突事故の引き金となっています。