観光客や県外の食べ歩きファンが最も抱きやすい疑問が、「庄内における麦切りとうどんの違い」です。どちらも原材料は小麦粉・塩・水ですが、製麺工程、麺の規格、そして食べさせる作法において明確な一線を画しています。
麦切りは、小麦粉を塩水で丹念にこね上げ、薄く延ばした生地を包丁で「切る」ことからその名が付きました。うどんが足踏みや強い圧延によって太さと力強い噛みごたえを追求するのに対し、麦切りは極限まで薄く延ばした生地を細く切り揃え、強い弾力と滑らかな喉越しの共存を目指します。
特筆すべきは、麦切りを食べる際に添えられる薬味が「ワサビ」でも「生姜」でもなく、鼻にツンと抜ける「和からし」である点です。かつて貴重だった生姜の代用品として広まったとされていますが、濃い口の魚介出汁つゆとからしの辛味が、小麦の甘みを鮮烈に引き立てる至高の組み合わせとして定着しています。