クルマの動力性能とハンドリングキャラクターを決定づける要素の中で、もっとも大きなウェイトを占めるのがエンジン搭載位置の違いです。同じリア駆動であっても、重量物であるエンジンブロックとトランスアクスルがシャシーのどの位置に沈められているかによって、物理的な振る舞いは根本から枝分かれします。
ミッドシップとリアエンジンの違いを端的に定義する境界線は、「後輪車軸(ホイールハブ中心線)」です。前後の車軸の間、すなわちキャビンの背後・後輪車軸の前方にエンジンを配置する方式がMR(Mid-engine, Rear-wheel drive)と呼ばれます。これに対して、後輪車軸よりもさらに後方、リアオーバーハング部分にエンジンを吊り下げるように配置する方式がRR(Rear-engine, Rear-wheel drive)です。
走りの質感を語る上で欠かせないのがMRとRRの重量配分比較です。一般的なFR(フロントエンジン・リアドライブ)が前後50:50を理想とするのに対し、MR車の前後重量配分はおおむね「44:56〜40:60」、RR車(代表格であるポルシェ911カレラなど)は「39:61前後」に達します。このフロントタイヤとリアタイヤにかかる輪重の差が、ブレーキング時の減速G、コーナリング進入時のノーズの入りやすさ、そして脱出時のアクセルオンで地面を掴むグリップ限界に決定的な優位性と個性をもたらしています。
FR・MR・RRの違いを整理すると、FRが「万人向けの自然なコントロール性と実用居住性の調和」を目指した歴史的スタンダードであるのに対し、MRは「コーナリング速度の極大化」、RRは「スペース効率と脱出ダッシュ力の両立」という、まったく異なる純度の思想から発展してきたことが分かります。