インターネット上の歌詞解釈フォーラム等では、しばしば「この曲は彼女に浮気された男の悲惨な歌ではないか」という短絡的な見解が散見されます。しかし、歌詞の細部を精緻に検証していくと、単なる裏切り劇にとどまらない複雑な関係性が浮かび上がってきます。
作中において、相手が朝帰りした明確な理由や浮気の決定的な証拠は一切語られていません。語られているのはあくまで「主人公の部屋で渦巻く疑心暗鬼と妄想」です。飲み会で終電を逃しただけかもしれない、あるいは友達の家に泊まっただけかもしれない。それにもかかわらず、最悪の想像をしては勝手に傷つき、怒り、同時に「嫌われたくない」と怯えているのです。
つまり本作の核心は、相手の不貞を告発することではなく、「相手の気持ちが完全に自分に向いていないのではないか」という不安に耐えられない自己防衛の心理にあります。問題の本質は相手の行動そのものよりも、主人公自身の精神的な揺らぎと執着にあるという点を見落としてはなりません。