本作の圧倒的な説得力を支えているのは、小澤雅人監督による徹底的なリサーチです。児童虐待をテーマにした『風切羽〜かざきりば〜』でも高い評価を得た小澤監督は、性暴力救援センターや臨床心理士、そして何より当事者たちへの丹念な取材を重ね、脚本を執筆しました。特定の事件をそのまま再現した実話劇ではないものの、作中に散りばめられた被害者の反応や家族のすれ違い、周囲の心ない言動は、膨大な取材記録と生の声から抽出された紛れもない現実です。
主演を務めた佐藤乃莉は、過去のトラウマに蝕まれながらも気丈に振る舞おうとするカオリの繊細な心理を、呼吸の一つひとつ、視線の揺らぎに至るまで克明に表現しました。製作時のインタビュー資料によると、佐藤は役作りにあたり当事者の手記を読み込み、自身を精神的な極限状態に追い込んで撮影に臨んだと語っています。また、被害に遭う女子高生・愛を演じた石橋宇輪の慟哭や、遠藤新菜ら脇を固めるキャスト陣の容赦のない現実描写が、物語に逃げ場のない真実味を与えています。